青鈍

::: a blue creature in your heart :::

ショウの幕切れ

ショウの幕切れ

 

同じサイズの靴がぶちまけられた狭い玄関
私と彼女の小さな部屋

転がったマニキュアの瓶
気の抜けた頬紅の刷毛
女を彩る使いふるしの俗物にまみれ
私と彼女は座っている
今日一日をやりすごすため

灰色のアルコール
虹色の煙
あふれでる白銀の涙
今日一日の女のショウ
女であれば
虚飾のすべてが私のもの
私は今日も美しい

あの日
私を美しいと言った あの人
夜明けの空のように
曙光に染まる私の目蓋
朱鷺色

女であること
彼女であること
私がそれをやめたとき
私は何になるのだろう

私の膜
内臓すら覆う彼女の金色の庇護を
私が打ちすて
裸足で道を歩くとき
私は何者だろう
私の影は何色だろう
この闇夜をひとりで歩くのか

彼女そのものそれなしで
私自身は二度と存在しないのに

彼女がいない夜
中天の月は砕け
星は落ち
宵の雲のあと道は
脱ぎすてた靴の足音で
埋まる

女の足音
今日一日の女の人生
残響が及ぶかぎり
私たちの幕切れはまだ