青鈍

::: a blue creature in your heart :::

炎のつぶ

炎のつぶ

 

炎のつぶがパラパラと落ちて
私の傘が燃えていく
木々の梢にも火がともり
あたりは昼のよう
明るく
私の道行を助けてくれる

熱風に焼かれ凝った血
灰になった骨
燃えがらの人間から昇る魂の煙

熱で割れた蛍光管が
光の矢となって
路面の石油に火をつける

固まった皮膚の下
冷たくなった心臓
死してなお青い炎に光る体に残る情念

死の道行

三昧の煙が私を呼ぶ
煙の先に私の体がある

すべて燃えて日が沈み
すべて輝いて月が昇り
星を目指す私を送る

噴きあげる生命の炎

血を許されざる者

血を許されざる者

 

心と心臓が死んで
血は緑色

私は空の体で
あなたの愛を夢見ている

誰も呼ばない私の名前
誰も知らない盲いた瞳

あなたから純潔を奪い
自らを偽って
私は生者の赤い血を夢見ている

けして凍らぬ
私の心
そして愛
あなたの腕の中で私が夢見ていたもの

愛していると
伝えられたら
よかったのだけど

東の空 青い光の中
蜃気楼となって立ちのぼる命の群れ
そこを歩くのは
赤い血を許されざる者
死してなお
恋しいものを慕う者

目蓋の奥に残る
愛の残光
慈悲の赤い幻

ショウの幕切れ

ショウの幕切れ

 

同じサイズの靴がぶちまけられた狭い玄関
私と彼女の小さな部屋

転がったマニキュアの瓶
気の抜けた頬紅の刷毛
女を彩る使いふるしの俗物にまみれ
私と彼女は座っている
今日一日をやりすごすため

灰色のアルコール
虹色の煙
あふれでる白銀の涙
今日一日の女のショウ
女であれば
虚飾のすべてが私のもの
私は今日も美しい

あの日
私を美しいと言った あの人
夜明けの空のように
曙光に染まる私の目蓋
朱鷺色

女であること
彼女であること
私がそれをやめたとき
私は何になるのだろう

私の膜
内臓すら覆う彼女の金色の庇護を
私が打ちすて
裸足で道を歩くとき
私は何者だろう
私の影は何色だろう
この闇夜をひとりで歩くのか

彼女そのものそれなしで
私自身は二度と存在しないのに

彼女がいない夜
中天の月は砕け
星は落ち
宵の雲のあと道は
脱ぎすてた靴の足音で
埋まる

女の足音
今日一日の女の人生
残響が及ぶかぎり
私たちの幕切れはまだ

まどろみ

まどろみ

 

私は道をたどり
世界の体内に入る
空気は重く息苦しいが
私は少し安心する
雨がやんで
やがてバスが来る
私は移送される
ただひたすらに世界の中を
闇の中もバスは走る

目の前
バスのフロントガラス越しに見える景色は
雨上がり
とてもきれい
濡れた路面に
ヘッドライトが反射して
光はすべて美しい

私は光がほしい
自分自身を正しく見るために
白昼の光の下
自分で自分を解剖して
調べることができたら
いい

世界の体内にいながら
私は外を見ようともせず
自身の精神について
考え
眠る、現実を

バスは走り
闇は私を飲みこんで
うねり
光もいずれ飲みこまれる